撤去命令10年、不法投棄産廃に「打つ手なし」
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適正な処理をされず、放置された産業廃棄物の問題が長引いている。佐賀県鳥栖市江島町では、違法に埋められた家屋の廃材や廃プラスチックなどの撤去を県が命じて10年以上たつが、一部を除いて今も残る。産廃業者の中には、経営基盤の脆弱ぜいじゃくさなどから命令を履行しないケースもあり、住民は不安や不満を募らせている。

 轟音ごうおんを響かせたダンプカーが相次いで行き来し、荷台の土砂を降ろして走り去っていった。佐賀競馬場(鳥栖市江島町)の裏手にある山林の一角。現在、残土置き場として使われているこの土地は、かつて鳥栖市と福岡県久留米市の中間処理業者2社が許可を得ないまま、地中に産廃を埋めていた。

 住民の連絡を受けて県が調べたところ、産廃は約3万6000立方メートルに上ることが判明。県は2006年5月、廃棄物処理法に基づき、業者側に撤去を求める措置命令を出した。

 業者側の要請で、県は撤去期限を2回延長したが、2万4000立方メートルの産廃が残ったため、09年3月、操業を続ける1社に対し、中間処理業者の許可を取り消した。

 県は現在も2社の代表だった2人に撤去を指導しているが、1人は県外に出て連絡が取りづらい状況という。もう1人は撤去に応じる意向は示しているが、埋設物に関しては、ほぼ手つかずの状態だ。

 県循環型社会推進課は「現行の制度では、指導を守らなくても罰則は科されない。県として打てる手だては、指導の継続以外ないのが実情」と頭を抱える。

 ◆代執行、高いハードル

 県内には唐津市や江北町などにも撤去が進まない産廃がある。改善されない状況に、住民の間からは、業者に代わって自治体が撤去、処分する「行政代執行」を求める声も出ている。

 しかし、その費用には税金が投じられるため、安易に執行すると、不法行為のツケを広く住民が背負い込むことになりかねない。

 県は「地域の事情に応じて代執行の必要性を判断するが、億単位の税金を動かすことにもなるのでハードルは高い」と慎重だ。

 江島町では、県が定期的に井戸水を検査しているが、今のところ有害物質の検出はなく、住民の健康に直ちに影響を及ぼすような汚染はないとしている。

 江島町の住民でもある斉藤正治・鳥栖市議は「地中の陥没や地下水汚染などの不安は尽きない。環境の悪化が表面化してからでは遅い」と行政の対応に反発している。

 ◆県は告発見送り

 鳥栖市江島町の産廃について、県は中間処理業者の代表らを廃棄物処理法の措置命令違反で告発しようとしたが、手続きの不備で見送った経緯がある。

 県循環型社会推進課によると、当時の担当者が業者への聞き取りに基づき、産廃を埋めた範囲を「江島町3256番地163」など三つの地番に設定。撤去を求めて措置命令を出し、業者側は一部を除去した。

 しかし、期限までに全ての撤去を履行できない見通しとなったため、県は告発を検討。相談を受けた県警が調べたところ、埋設物は三つの地番以外にも及んでいることが判明、命令範囲に残る正確な産廃量が分からず、告発を見送ったという。

 県警は「措置命令違反の捜査には行政からの告発が前提」としている。住民の一人は「県は問題を解決するという姿勢が足りず、地域を軽視している」と憤る。

 廃棄物処理法に詳しい上智大の北村喜宣教授(行政法)は「県は措置命令を撤回して出し直し、告発につなげるなどの手法もあったはず」と指摘している。(横山潤)

 ◆「行政代執行」=行政上の命令に従わず、著しく公益に反する場合、自治体などの行政機関が税金を投入して命令内容を代行する。費用は命令を受けた個人や法人に請求できるが、支払い能力がないなど、回収が困難なケースが多い。

(出典元:産廃WEB)


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