ごみ焼却場の1日 垣間見える人々の営み 回収業者「まだ使えるのに」
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人々の営みの中で、日々吐き出されるごみ。環境省によると、県内で排出される一般廃棄物は年間49万トン(2015年度)。1人当たり1日953グラムを出している計算になる。私たちが捨てたごみはどうなるのか-。2月下旬の木曜日、長崎市のごみ焼却施設を訪ね、ごみの行く先を見詰めた。

 午前9時、同市神ノ島町3丁目の西工場。市内で回収したごみを満載した収集車が続々と押し寄せた。中身は紙や生ごみ、プラスチックなど。「ごみピット」と呼ばれる巨大な空間で一時保管された後、クレーンでUFOキャッチャーのように焼却炉へ投入される。

■1日に300台

 現場責任者の安達稔さん(62)によると、この日は210トンが持ち込まれる予定。1日に延べ250~300台の収集車が運んでくるのだという。「月曜だと週末のごみが多くて、もっと忙しい。取りあえず10時ごろまでがピークです」

 収集車を降りた作業員に声を掛けてみた。市中心部のごみを集めてきたという中年男性は「ちょっとトイレに。急ぐので申し訳ない」。慌ただしく車に乗り、次の回収場所へ向かった。

 つかの間の休憩を取った浦井好さん(71)はパート歴8年目。冬は資源ごみが減るそうで、「寒いとペットボトルのジュースを飲まなくなるからね」と分析する。「生ごみは重くて体力を使うのよ」と腕をさすりながら車に戻った。

■家具を破砕

 ごみ収集車の波が一段落すると、粗大ごみ回収業者のトラックがちらほら。つなぎを着た男性(57)は、リフォームや遺品整理のため捨てられた木製のテレビ台やたんすなど約20点を搬入した。これからは引っ越し時季で忙しいとか。「最近、まだ使えるのに捨てる人が増えたよ」とぽつり。

 家具は破砕機に次々と投入された。「ドンッ、バシッ」。あっけなく壊れる音は、どこか切ない。

 個人もいる。軽ワゴン車でやってきた白髪交じりの無職男性(68)。取材日の10日ほど前、98歳の父親を亡くしたという。四十九日の法要で親戚が集まるため、自宅のスペースを空けようと椅子などを捨てに来た。「あっても使わん」。母親や妻も既に他界し、一軒家に1人暮らしとなった。

 「それでも」と男性は続けた。「母や妻の服なんか捨てられなくてね。たんすを開けると、香水か化粧品か…。ふわっと懐かしい匂いがするんですよ」

■動物死骸も

 安達さんが「そろそろ軽トラが7、8台来ます」と教えてくれた。午後1時すぎ。高齢者や障害者の自宅を戸別訪問し、ごみの回収や安否確認をする市のふれあい訪問収集車だ。「今日もきつい坂道を上ってきたけど、俺だってリタイアした高齢者」と笑いながら語る作業服の男性は、67歳。

 いろいろなごみがある。安達さんによると、駆除されたイノシシやシカの死骸はほぼ毎日持ち込まれる。ランタンフェスティバルや長崎くんちなどのイベントがあると、ごみの量はぐんと増えるという。

 午後5時に業務終了。底冷えするコンクリート床のごみ焼却施設に8時間いたせいで体が冷えきっていた。近くの自動販売機で温かいお茶を買い、ふたを開けて思った。「このごみはどうなるんだろう。水筒に入れてくれば、このごみを減らせたな」。少し罪悪感を感じながら、お茶を飲み干した。

 

出典:長崎新聞


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